「たかが頭痛じゃない」を伝える仕事
大塚製薬の医療関連事業にはどのような仕事があるのでしょうか。今回は片頭痛の医薬品担当者にインタビューしました。片頭痛でお困りの方や、大塚製薬が医薬品も扱っているなんて知らなかった!という方、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
【糸田川さんのプロフィール】
大学で医学・保健学を専攻し、臨床検査技師の資格を取得。2008年に入社し、医薬情報担当(MR)として医療関係者を対象に情報提供・収集活動をした後、2020年から中枢神経領域の製品担当となり、2022年からはプロダクトマネージャーを務めている。
頭痛は我慢するもの?医薬品を担当して向き合う社会課題
―現在の業務について教えてください。
糸田川:現在、医薬品事業部で、神経疾患の医薬品のプロダクトマネージャーをしています。マーケティングだけでなく担当製品をどう育成していくか、チームメンバーと一緒に考えて実行していくのが仕事です。
担当している医薬品は、医療機関で処方される薬です。そのため、私たちが薬の情報を提供する相手は、基本的に医師や薬剤師、看護師など医療関係者になります。ですが、最終的にその薬が届けられるのは患者さんです。薬のどんな情報があれば役立てていただけるのか、患者さんやご家族など周囲の方、医療関係者の方、それぞれの立場に立って考えます。薬の有効性だけではなく、副作用などの情報、薬の使い方をわかりやすく伝えることも大切です。そういった情報をいつ、だれに、どのように伝えていくのか、社内のいろいろな部署の人とコミュニケーションをとりながらプランを考えて決めています。
例えば、担当している医薬品に、片頭痛の薬があります。片頭痛は外傷などのような目に見える病気ではないのですが、日常生活への支障が大きいにもかかわらず、なかなか理解が進んでいない病気だといわれています。まずは薬について医療関係者へ情報提供をしっかり行うとともに、患者さんやその周囲の方にも病気について正しく理解してもらえるよう関係部署と連携して取り組んでいます。
―片頭痛にはどのような課題があると考えていますか?
糸田川:頭痛には実はいくつもの種類があります。その中で、片頭痛は比較的身近な病気で、日本には約840万人いるといわれています。悩んでいる方は特に20-40代の女性に多く、仕事や家事、子育てに支障が出るといった問題もあります。これは女性ホルモンの影響もあると考えられています。
「たかが頭痛、されど頭痛」と専門医の先生がよくいわれるのですが、これは片頭痛に関する誤解が多いということ。その誤解を解いて、前向きに、本来やりたかったことができるような日常を送れるように、患者さん目線に立って、正しい情報を届けることで、適切な治療につながってほしいと思っています。
―片頭痛に関する誤解とは?
糸田川:「頭痛くらい」と思う人もいるかもしれませんが、仕事や家事ができなくなったり、寝込んでしまうくらい生活に影響をきたしている方もいます。それにもかかわらず、「サボっているんじゃないか」と周りに思われないか不安で、休みたくても休めなかったり、「頭痛くらい我慢しないといけない」という思い込みもあります。片頭痛があっても病院での治療を受けていない患者さんは約7割といわれており、仕事・家事・子育てなど、無理をしながら頑張っているという現状があります。このように患者さん本人でさえ誤解を持っているような状況です。患者さんが片頭痛を我慢しなくてもいいように、適切な治療やケアで対処・軽減できる可能性があることをもっと世の中に伝えていきたいと思っています。
―片頭痛への社会認識も変わってきた?
糸田川:ある調査によると、片頭痛による経済損失は2兆3,000億円。経済産業省が毎年行っている健康経営度調査でも最近、従業員への教育という項目に「片頭痛・頭痛」が新たに追加されています。近年、経済面含め片頭痛は大きな社会課題という認識が広まりつつあります。片頭痛がどんな病気なのか、本人だけじゃなく周りの方々も理解して、片頭痛で困っている方が病院に行って医師に診てもらうことが当たり前になる。そんな世の中にしていけたらいいなと思い、日々取り組んでいます。
常に「患者さん目線」であれ
―そもそもの話となりますが、糸田川さんはなぜ大塚製薬に入社しようと思ったのですか?
糸田川:学生時代から、人体や健康に興味があり、特に遺伝子が話題となっていたので、それを学びたいと思っていました。大学で医学・保健学を学び、ウイルスやワクチンについて研究し、在学中に臨床検査技師の資格も取りました。大塚製薬は、製薬会社として世界中の患者さんの健康を目指して新薬を開発していますが、ニュートラシューティカルズ関連事業も展開していて、医薬品だけでなく、幅広い領域で展開していることに興味を持ちました。他の製薬会社とは違う、ちょっとユニークな会社、という印象で、ここでなら健康について幅広い仕事ができる、チャレンジしたいと思ったのがきっかけです。
―MRを経て、医薬品のプロダクトマネージャーになりましたが、今までで最も大変だったことは?
糸田川:もともと何かしらチャレンジがしたくて入社して、実際させてもらっているわけですが、やはり新薬を世の中に送りだすというのは挑戦の連続でした。特に、会社として初めてのことにチャレンジするときには、ゼロから考える必要があり、大変ですが、やりがいも感じています。MRとして働いていたときには、薬を医療関係者に紹介して、患者さんに役立てていただくという活動をしていましたが、次第に、新しい薬がどのように世の中に送り出されるのかにとても興味が湧いてきました。今の部署に異動して、実際に新薬に関わることができ、一生に一度あるかないかの貴重な経験をしていると思います。
―大変なことも多いと思いますが、どんなやりがいがありますか?
糸田川:医療関係者から感謝の言葉をいただいたり、医療関係者を通じて、患者さんの喜んでいる声を聞くと嬉しくなります。例えば、「片頭痛で断念していた趣味を再開したい」「前向きな気持ちに変わった」といったお話を聞くと、陰ながらではあるんですが、この仕事をしていて良かったと感じます。
また、片頭痛に関して、看護師資格のある社員が医療機関に情報提供する取り組みをしているんです。この片頭痛という疾患に限らず、医療の中で看護師の役割は非常に大きいと思っています。
例えば、片頭痛の患者さんは、診察の際に「頭が痛い」ということは医師に伝えると思います。でも頭が痛くて家事ができないとか、イライラしてしまったとか、頭痛によって引き起こされる日常生活の悩みを医師に相談しづらいこともあると聞きます。実は、そういった悩みを看護師や薬剤師にお話していることも少なくありません。
私たちが情報提供のときに大切にしているのは、患者さん目線であるということ。患者さんが本当はどんなことに困っていて、それに対して私たちが何を提供できるのか、いかに役立ててもらえるかというところを意識して取り組んでいます。だからこそ、医師や薬剤師だけでなく、看護師への情報提供も大切にしていきたい。そういう活動が少しでも医療の手助けになれたら嬉しいですね。
―最後に、今後の夢を教えてください!
糸田川:今の立場としては、社会の中で片頭痛に対するヘルスリテラシー*を向上すること。そういったところに少しでも貢献できればと思っています。個人として将来の夢は、今の仕事に留まらず、いろいろなことにチャレンジしていきたいです。 最近では薬だけではなく医療環境そのものが変化してきているので、これまでの経験を活かして、もっと幅広い形で人々の健康につながるような活動をしていきたいと思っています。
*ヘルスリテラシー:健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力。自分の身体について考え、多くの健康情報の中から適切な情報を見きわめて使いこなすこと。この力を向上させることが、病気の予防や健康寿命の延伸につながるとされています。
編集部のつぶやき
社員インタビュー企画をお読みいただきありがとうございました!実は編集部員にも片頭痛もちが・・・。台風や天気の悪い日は、頭痛で出歩くのが億劫になったり、仕事の能率が下がることも。今回のインタビューを通じて、頭痛について正しい知識を身につけたいと考えるきっかけとなりました。
次回も社員インタビューをお届けします。大塚製薬で働く人の想いを感じていただけると嬉しいです。お楽しみに!!