見出し画像

「ママはこんなことをしたよ」といつか胸を張って言える日を目指して – 患者さんの社会復帰をVRで支援

大塚製薬の医療関連事業では、医薬品以外にこんなこともしています!をご紹介。今回は、VR(Virtual Reality:仮想現実)を用いて統合失調症患者さんの社会復帰を支援する製品「FACEDUO(フェイスデュオ)」を使った取り組みを担当している兵庫(ヒョウゴ)さんに話を聞きました。

【兵庫さんのプロフィール】
大学では国際社会学を学び、留学経験を活かせるグローバル企業で働きたいとの思いから2011年に大塚製薬に入社。精神科領域の医薬品を担当するMR(医薬情報担当者)を経て、デジタルソリューション推進プロジェクトメンバーに抜擢される。2人の子どもの育児にも奮闘しながら、全国の医療・福祉に携わる方々と精神科リハビリテーションについて日々ディスカッションを重ねている。


精神科リハビリテーションの活性化の一助となりたい

―現在の業務について教えてください。

―現在の業務について教えてください。

兵庫:VRを用いたFACEDUOという製品で、統合失調症患者さんの社会復帰を支援する取り組みを行っています。全国の医療や福祉に携わる方々と精神科リハビリテーションについてディスカッションし、FACEDUOを活用した提案を行っています。

精神科における治療では、薬物治療によるサポートと、ソーシャルスキルトレーニング[SST](※1)を含む精神科リハビリテーションなどの心理社会的サポートのふたつが重要であるといわれています。精神科リハビリテーションとは、患者さんの持つ能力を回復・向上させることで自立した生活が送れるようサポートすることですが、「専門家が近くにいない」「リソースが限られる」などの理由(※2、3)から、精神科リハビリテーションを受けられる患者さんが限られているという課題があります。そのような課題に対して、VRを活用したFACEDUOで解決のお手伝いができればと思って日々活動しています。


※1 病気によって低下した社会・生活技能を回復するための援助技法を用いた社会復帰のためのトレーニング
※2 岩崎香ら,順天堂大学スポーツ健康科学研究 第10号,9~20, 2006
※3 平成20年度障害者保健福祉推進事業,「精神科デイ・ケアの利用に関する実態調査の結果報告」,一般社団法人日本精神科看護技術協会



―「VRで社会復帰をお手伝いする」とは?

兵庫:FACEDUOはVRゴーグルをつけていただいて、SSTを行うというものです。統合失調症患者さんが社会生活を送る上で必要となる、対人関係や自己管理能力などのスキルをVRで練習することができるプログラムになっており、SSTのVR映像内では、例えばコンビニや職場などの日常生活におけるリアルな体験が再現されます。VRなので、その場面が理解しやすく、患者さんと支援者の方がスムーズに状況を共有できるようになっていて、経験の少ない支援者でも実施することが可能です。患者さん本人の視点と客観的な支援者の視点から、VRで体験した内容を一緒に振り返ることができるので、その場の状況についてだけではなく、相手からどのように見られているのかについても考えながら取り組めます。このVRコンテンツの制作には精神科専門医も責任者として携わっています。

VRコンテンツイメージ(一例)

―医療現場・福祉現場の方々からはSSTについてどのようなお話を聞きますか?

兵庫:やはりマンパワーが必要というお話を伺うことが多いです。また最近では、行政の方も地域で精神疾患の患者さん向けの様々な支援策を打ち出されていて、支援者のスキルアップのための体制を整えているなど取り組みについてのお話も聞きます。体制の整備は進んできていますが、時間的制約もあり研修になかなか参加できない場合や身近に指導者がいない環境も想定されます。そのような場合にFACEDUOを用いることで懸念事項が解消され、SSTの理解や実践方法が広がり、必要とする方に精神科リハビリテーションがきちんと届くようになれば良いなと思っています。

そのためには、適切なご提案ができるように、「実はこんなことがあって…」と気軽に話していただける関係を築けるよう、全国の医療福祉施設の皆さんがどのような課題を抱えているのか、じっくりお話を伺うことを大切にしています。私自身「話しやすい人ってどんな人なのかな?」と考えたときに、やはり身近に感じてもらえることが必要かなと思っているので、「私も実はこんなことがありまして…」「こんな失敗があったのですが…」と先に自己開示をすることで相手が話しやすい雰囲気づくりを心がけています。

MRの頃は医師や薬剤師と話すことがほとんどだったのですが、今は作業療法士や看護師、福祉関係者から行政の方々に至るまで、精神科リハビリテーションを通じて統合失調症患者さんの社会復帰をサポートしている方々とも話をしています。
最近は、患者さんの声をより身近に感じられる出来事も増えてきました。支援者の方から「FACEDUOを体験した患者さんが『すごく楽しかった』と言っていたよ」など、リアルな感想や評価を聞くことが励みにもなっています。今後も私が情報提供することで精神科リハビリテーション活性化の一助となれればと思っています。

大塚製薬の「人を育てて共に成長していこう」という社風


―今のお仕事では、MRの経験が活かされているのですね。

兵庫:精神科領域のMRで培った経験には助けられています。ただ、現在のお仕事では前例のないことや経験の延長線上で解決できないことが多々あります。今は関係する方々が多岐にわたる上に、型にはまる正解がないなと感じていて、試行錯誤しながら一生懸命考えて臨機応変に対応できるように取り組む日々です。大変なことですが、それと同時に一つ一つが自分の財産になっているなと実感しています。

私は元々ITリテラシーが高かったわけではないので、デジタル領域のスペシャリストの皆さんと一緒に仕事をしていくことは非常にチャレンジングでした。なんとかついていっている日々からスタートしましたが、新しい分野で知識やノウハウをたくさん習得できるので、毎日が新鮮で楽しいです。

―困った場合はどのように対応されていますか?

兵庫:導入いただく施設でのネットワークやセキュリティに関する課題だったり、システムに関するご質問だったり、私自身がテクニカルな解決方法を持ち合わせていなくても、大塚製薬のIT部門やFACEDUOの製造元である株式会社ジョリーグッドの皆さんが積極的に助けてくれたりと、ひとりで悩まずにチームで対応していける環境が整っているのはありがたいです。

もともと当社には支店や部署などの垣根を越えてたくさんの社員とつながることができる雰囲気があり、困ったことがあると手を差し伸べてくれる人が周りにたくさんいます。これは、人を育てて共に成長していこうという社風があるからだと思っていますし、自ずと仕事の提携先ともこの価値観を共有しながらお互いに協力することで切磋琢磨できていると感じています。

私は就職活動の際に、思いやりにあふれた人が多い会社に入りたいと思っていました。上司や先輩が部下や後輩の面倒をみたり、自分も助けてもらった経験があるからこそ後輩を大切にしたいと思ったり、そういう連鎖があたりまえのように存在するのが大塚製薬の魅力だと思います。全国の各現場単位で起こっているポジティブな連鎖が会社全体に行き渡っている感じがします。この会社で10年働いてみて、思い描いていた会社に入れたと改めて嬉しく思っています。

子どもに胸を張れるものをひとつ創る


―兵庫さんの今後の目標について教えてください。

兵庫:VRを用いた統合失調症患者さんの社会復帰支援という事業は今までになかったものなので、まさにゼロから創り上げていっている最中です。MRの頃から、統合失調症患者さんの治療におけるリハビリテーションの重要性についてたくさん話をお聞きしてきたので、まずはFACEDUOを活用した取り組みを広げていくことをとにかく頑張っていきたいと思います。

また、入社してからずっと英語の勉強を継続しており、いずれは海外で働きたいと思っています。会社としても英語の勉強を推奨・支援していることや、同期がMBAのために留学をしたり、上司が海外赴任の経験があったりと身近に海外経験のある人がたくさんいるからこそ勉強も継続できているのだと思います。そして、チャレンジする人を応援する文化やスキルアップできる研修の場がたくさんあることも当社の魅力ではないかと思いますので、これまで携わってきた精神科領域で海外の方と一緒に何かをゼロから創りあげてみたいです。今までにない新しいものを、グローバルな視点で創る経験をすることで自分自身も成長し、会社にも貢献できると嬉しいなと思います。定年後に「ママはこんなことをしたのよ」と子どもに胸を張って言えるものを何かひとつ創ることが私の夢です。
 

編集部のつぶやき

お読みいただき、ありがとうございました!当社には、兵庫さんのようにデジタルツールを活用して患者さんの社会復帰の支援に取り組んでいる社員もいます。これからも、「大塚製薬ってこんなこともやっているんだ!」と知っていただけるような発信をしていきたいと思っています。次回もお楽しみに!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!